設計事務所は 第三者なのだろうか?
設計事務所は本当に第三者と呼べるのだろうか?
ハウスメーカーの住宅を購入するのはちょっと待ちなさいというこの手の類の本。著者がどのようなお立場(ほぼ建築家)で内容をよく読んで理解することが大切であり、ハウスメーカーの家は高いだろうけど悪いとは言い切れない。
例えば、ハウスメーカーの現場担当者が5−10棟を担当するというのも工務店の現場監督とは意味が違うからで、商品として住宅を建てるための施工教育を受けている協力業者(下請け工事会社)の監督が常時現場を監督するという仕組みをわかっていたら、それが悪いとは言えないし、だから間接費が多く必要となり価格が高いともいえるのであるが、工務店や建築家と比較することではない。
現場の図面に関しても、ほとんどの会社は、標準施工マニュアルが整備されて、標準仕様の図面は用意されているからこそ“規格住宅”というのであり、その規格外のものについて詳細図が都度作成されるので、このように“規格にはまらない”高額となるイレギュラーなものを頼まないで、できるだけその会社が提案する規格されたものを採用することに意味がある。
ただし、標準納まり図や施工図などは他社に流れることを嫌うので、関係者以外に渡さずに施主であっても公表しないのが普通でその部分がブラックボックスと言われても仕方がないが、それらを含めて、ハウスメーカーが推奨する企画住宅とはそういうものであると理解しないで否定や批判をすることではありません。
一方でそれを否定や批判している設計事務所などに設計を依頼した場合、施主が予算を提示したうえで設計されたものであっても、工務店や建設会社に見積もり依頼をすると見積金額が予算を大幅に超えることも多々あり、設計事務所に頼んだから安くなるという事でもありません。
それどころか建築家によっては、知名度も技術力や知識も高くなればなるほど施主の意向を無視して自己満足の作品づくりに走るものも多くいるので、設計事務所の対応能力にもこのような部分で疑問が多いことも事実ではある。
これは、残念ながら建築家を紹介するというプロデュース会社が絡んでもこの根本的な問題の部分を回避していればいいのだが、ほとんどそれは存在していない。
依頼する施主も自分自身の力で住宅の良し悪しを客観的に判断できる人もほとんどいないから なんとなく高くてもハウスメーカーを選ぶのである。わからないから余計に施主側も、もしなんらかの欠陥症状が起きてしまった時にその責任を問うのであれば、ハウスメーカーに責任施工を一括で請け負わせた方が責任の所在がはっきりすると考えるが、設計事務所に設計監理を任せて、工務店や建設会社に施工を請け負合わせた場合には、どこまで設計事務所が責任を負って工務店が全責任を負ってくれるのか、責任のなすり合いに終わるのではないかという懸念が残ってしまう。
もちろんハウスメーカーも“企画住宅”という仕組みで詳細見積もりを出さないのであれば余計に単価や利益は提示しなくても、せめてどのような材料をどれぐらい使うのかなどの提示をすればいいのであり、それがわかるように提出するのは、あたりまえでもあり、これらを消費者に一切提出しない会社が怠慢と言われても仕方がないと思う。
“設計瑕疵は欠陥住宅とは言わない” という設計士もおられますが、デザインを追求するばかりに無理なオサマリによる雨漏れなどについて設計監理として多額の費用を施主からとるのであれば監理者として責任をとるべきである。
それが住宅で作品づくりとなれば、都度数十枚の図面をその家のためだけに詳細まで細かく書いて整えるが、冒頭でも書いたように仕様と価格など見積価格が無視されていることに気づかなくてはならない。
しかもこの数十枚の図面と設計監理費が施主にとって費用が高くつくのである。図面が多いからよいというものでもなくて、実際現場の事を知らない設計者の図面のためにおさまらない現場は多々あり施工会社は苦労されていることもよく聞く。
だからこそ言えるのが、設計者は、“先生”ではないのである。勘違いしてはダメだ。施主がいて施工する工務店などがいて一緒に作り上げるという意識が必要で協業なのであることを忘れてはダメである。即ち今の家づくりでも立場を考えても、設計事務所が決して第三者の立場とはいえない存在である事がおわかりいただけるかと思う。
中古住宅を含めて、さも第三者のような検査として情報がこれからもっと蔓延るが、ブラックボックス化しないように、もし第三者の検査を望むのであれば、しっかり費用を出して純粋に検査会社の検査員に頼むべきである。