Nさんちプロジェクト(価格が見える家づくりのはじまり)
ある年の年明け早々、Nさんのホームページからのご相談の内容は次の通り。
>>>はじめまして。現在、大阪市内の下町の長屋の借家に結婚してから新居として住んでいますが、北に面しており、南側は3階建てが立ちはだかり全くといっていいほど採光がありません。
昨年子供が生まれ、手狭になったこともあり、一軒家を建てたいと思うようになったので、住宅展示場にハウスメーカーを見に行きました。とってもステキで気に入りましたが、とても手が届く感じはしませんでした。
そんな折、悩んでいたところ、ハウスネットさんをネットで見つけ、公平な視点からお話が聞ければと思い、資料を申し込みたく思いました。しっかり勉強をしていいおうちを建てたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
こんなご相談の書き込みからNさんの家づくりがはじまりました!
絶対に土地を買って、注文住宅を3000万以内で建てる!
という意気込みでのNさんの家づくり。その土地の予算をなんとか1000万以内で!と決めたNさんは、土地探しをはじめましたところどう考えても大阪市内では無理であると早急にご判断し、ご主人さんの実家にも近くて緑が多い場所である郊外のニュータウンの大阪府泉南地区のとある分譲地に目を付けました。
そこは土地の価格は、66坪もありながらなんと1000万以内。もちろん著名なハウスメーカーのモデルハウスなどもたくさん建ち分譲されている場所でもあります。
そのモデルハウスを色々拝見されましたら、分譲地のモデルハウスであれば、3000万以内で買えそうであるという目安をつけたようですが、しかしながらも、そのモデルハウスを買うことは、いわゆる建て売りと同じなのでNさんとすれば
・自分たちの生活のイメージができない
・モデルハウスにあわせた生活をしなければいけない
どうやらこれらの疑問を持たれるようですが、そんな折、ある分譲区画の土地を買うことに予約を入れて話を進めてみたご様子で、その土地には、建築条件は付いていませんので色々な会社にまずはご依頼。
その依頼した会社の中には、テレビCMでよく見かける当時は、ローコストで有名なあるハウスメーカーや○○工務店という名のハウスメーカーなどとお話しをされましたが、提案されるプランに関して、どの会社もしっくりこなかった様子です。
プランづくりを進めた実感としては、担当者に言えば、その通りにカタチになってくるのですが、所詮素人が言っている事なので本当にそれでいいのかもわからない。きっとプロがそれでもいいといっているから、それでもいいのかな?という感覚でしかない。でも、これって、よく考えると使い勝手が悪いなどでこのまま進めるのが怖い・・・。
なので、結果的に素人でも突っ込める要素がたくさんある。その感覚を営業マンに伝えると伝えている事がベストかどうかもわからないのに、そのまま変更された図面がまた提出されてくる。
しかも、そんな段階ではない状態なのにローコスト系の営業マンは、3回目の商談で早くも契約の話をしてきたご様子で、●●工務店という名のハウスメーカーは、営業をしてはいけないはずのファイナンシャルプランナーを連れてきたりするなど、なんか注文住宅で建てる家づくりって、こんな感じで進むの? でも、経験はないが、何かがおかしい・・・何かが変だ・・・という感覚をもたれたようです。
この土地を購入予定として、そこにどの程度の家がどれぐらいの費用で建つのか?ということで、分譲地にある案内のまま、ある住宅会社をはじめ様々な家づくりをする会社で自分なりにご検討されましたが、どうも各社の家づくりとして合点がいかない・・・と感じてからのハウスネットへのご相談のようです。
相談された側のハウスネットとすれば、これに対する回答とご説明メールを返信し、資料をお送りして、ご面談による相談希望とありましたので、ご自宅までご訪問して、アドバイスや今後の家づくりの様々な方法などのお話をしました。
その提案としては、Nさんが要望する家ができるかどうかも検討していないので、やるだけやってみて、結果的に完全注文住宅で無理であれば、次の手としてモデルハウス購入を考えるという発想にされればいかがですか?とアドバイス。
この段階では、ご要望されている広さや仕様などの内容とご予算が合致しているのかも不明ですし、オリジナルつまり完全注文住宅の家づくりが、そもそも本当に無理なものであるのか?も疑問なところで、同時にどこの会社の提案も踏み込むだけの最終的な価格の結果が見えないご様子で、契約後に追加請求され最終トータル金額が全く見えてこない! これこそ今プロが進める家づくりの姿勢のようです。
なのであれば、ハウスネットでまとめてましょう〜と始まったNさんちプロジェクト。
もちろんハウスネットはサポートするのが目的であり、弊社が工事の請負契約をするわけではありませんのでお客さんに変わって、まさしく自分の家を建てるように設計事務所や工務店とあぁだ、こうだと経済的な家づくりの知恵を出しあいました。
模型は こんな感じ
実際は ほぼ同じでこんな感じです
当初希望するままにプランをすると37.82坪でその費用は、当時(2008年)の価格で建築本体工事1730万(坪45.8万円)、屋外設備工事が186万、その他設計費 水道分担金 保証料 照明器具代として合計273万、外構工事で125万円、総額税込2230万円となりました。
これは、価格を無視してプランを最優先としたために大幅にご予算が越えたので今度は、仕様・性能はなどは落とさずにもっと経済的なプランの変更を設計事務所と重ね−1.8坪の36坪で、建築本体工事1498万(坪41.4万)、屋外給排水などは、ほぼ同じで総額税込1980万となり、なんと250万の減額に成功しました。
なお、先ほどもお伝えしましたが、仕様も設備機器なども一切変更はありません。家のカタチとプランのみの修正変更です。その結果、全て含んでも、なんとか50万を切る家に辿り着くことができました。
ちなみに施工する工務店さんの利益率は20%で設定しておりますので、本体工事だけで言えば、41.5万円なので原価33.5万円の家ということになります。
いかがでしょうか?
性能も仕様も落とさずに経済的になりましたが、このように住宅(家づくり)って、よく考えて選別してチョイスすれば、ほんとに経済的になるのです。
それが、プロの偏りや考え、そのための説得やシガラミや私利私欲が絡むからとっても不経済で高くなるのであり、これが設計と施工管理の各プロのコラボなプロジェクトハウスなのです。
では、このNさんの工事の様子をご覧ください。床下には、ごみ一つ落ちていません。
ハウスネットでは、基本的に家づくりの経緯の段階では、既にご商談している会社をすぐに断らなくていい・・・とご説明しています。その理由は、比較検討した結果、その会社が適正であると判断できるかもしれないからです。
ですので、サポートとしては、まず色々とオハナシを聞いた結果、要望を踏まえ、設計コンペをして家づくりの会社を選ぶようにしましょう!ということで建築家ではなく、登録されている家づくり工務店さんにお声をかけました。
そこで(ここからもポイント)ご予算がとても重要なNさん。同時に注文住宅だからこそ間取りも大きな要素となります。つまり、建築家だけの設計コンペというカタチで進めると、とかく大切なコスト(建築費用)が無視されがちとなり、プランだけの過剰な競争となりますのでそれを避けましたが、その点、工務店の場合は、ある程度予算を考えながらプランづくりをされ、これについては、規格された住宅を提供しているハウスメーカーでも同じ事が言えます。
でも、最近の住宅業界の傾向としては、工務店であっても、営業系に注力している工務店などは、まずこのようなコンペに参加されませんが、その理由としては、口で説明しているのか?自信がないのか?殿様商売的に考えるとプランが横取りされるとでも思っているのでしょうか?とにかく参加されない傾向になりますが、このような会社は、提案+口で説得話法に現場を見せて、少しでも早く競合排除をして、比較できないようにした上で、追加や変更・オプションなどをあとから増やす、そんな傾向にあるようです。
こののち工務店数社のプランと概算価格が出揃いお客さまに選んでいただき、面談する工務店をピックアップしてもらいました。この際に残念ながら選ばれなかったプランについては、確かに選ばれない理由があり、それを判別するのが、はじめての家づくりである素人とはいえ、これはない!これはダメ!という選択はできるものです。
使い勝手・居室の位置など子供の動線までも悪い。。。などなど
ところが、実際にプランを選ばれて、その会社さんと面談したものの家づくりが思うように進まない。これは、おそらく言葉で表せない独特な相性というものなので、結果的に2回ほどだけお会いされてから商談を止めてもらうことにしました。
実は、他のお客さんのケースでも、この段階で下手な駆け引きをする工務店や住宅会社もあったりするから困ったもので、この段階で一度フリダシへもどしました。
この後は、ハウスネットのスタッフである私とハナシをして、仕様なども価格を意識して押さえてからしっかりと見積もりをしてみましょう!ということになり、設計サポート登録事務所の建築家にラフ決定後に図面作成をお願いしました。
その要望に関しては、ハウスネットのサポートスタッフがお聞きしておりますので、プロに伝えるべき内容、伝えなくても良い内容を判断して、プランをしやすい情報のみを設計者にお伝えしました。
すると・・・見事あっさりとなんと的を得たプランが手元に。。。このようなケースは、比較的珍しいのですが、あれだけすっきりしなかった間取りをほぼ一発で気にいっていただきました。
さて、ここでなぜコンペで、どこもかしこもスッキリしなかったプランが、サポート事務局と打合せをして依頼するとスムーズに〝土地の理屈〟にあったエゴでもないプランができましたが、実は これが今の家づくりの問題点なのです。
依頼する建て主の方は、ほとんどが未経験者でありかつ素人であり、その商談する相手を設計でも〝プロ〟と思いこまれますが、その相手は、売るプロであっても、設計に関してプロとは言えない方が多く、アマチュアだったりもするのです。
しかも、これまでの家づくりの経緯で進めると建て主が数社比較しても、対応や施工力が悪くても、価格が高くても、そのプランだけで依頼する会社を選んでしまう事になってしまうのですが、これがそもそもおかしいと言えるのです。
野球でいえば、抑えの投手にホームランまでも期待しているようなもので、つまり、家づくりも同じで適材適所のプロに頼めばいいといえ、売ることが上手で設計にも施工にも明るいオールランドプレーヤーなど現実には少ないものです。
このNさんの家づくり。その後、見積もりとプランの再調整を重ね、都度見積もり修正も繰り返して、何とかこの〝Nさんちプロジェクト〟としての家づくりが完成しました。
設計のプロと施工のプロ。各部調整をハウスネットがサポートする。そんな家づくりがこの価格が見える正直な家づくりプロジェクト住宅であり、産みの苦しみでしたが、生まれてくれば、やはり愛情も生まれ、いいものであり、ハウスネットからすれば、家づくりは、ほんと子供が生まれる時と同じ感覚です。
価格が見える家づくりプロジェクト